H30試行調査問題(以降、プレテスト)の問題を分析してみました。

まず、従来型のセンター試験とプレテストの受験形式を比較します。

センター試験

  • Reading: 200点、80分、38問、マーク式
  • Listening: 50点、30分、25問、マーク式

プレテスト

  • Reading: 100点、80分、43問、マーク式
  • Listening: 100点、30分、37問、マーク式

プレテストでは、RとLの得点が100点ずつになり、問題数もRが5題、Lが7題に増えます。また、全問題のうち4題が複数解答問題になります。複数選択問題は過不足なく解答した場合のみ得点されます。難易度ついては、プレテストの難易度はCEFRで表記され、レベルはA1, A2. B1, B2程度と表記されています。配点については、大問1・2・3(CEFR A1, A2)は各2点、大問4,5,6(CEFR B1, B2)は各3点。リスニングの音声については、従来型は大半がアメリカ英語であることに対し、プレテストではアメリカ英語、イギリス英語、非母語話者の英語が織り交ぜらてています。

さて、ここからは、思考力を問う問題かどうかという視点での分析です。今回は、欧米の現地校向けのReading Comprehension教材に記されている思考スキルをベースに、プレステストの出題内容を分類してみました。

  1. Finding the main idea & details 24問  情報検索問題
  2. Identifying fact or opinion 4問 事実か意見かを見分ける問題
  3. Making inferences 2問 文意から推測する問題
  4. Comparing & Contrasting 2問 共通点と相違点を見出す問題
  5. Sequencing 2問  適切な順序に並び替える問題
  6. Identifying cause and effect 1問 因果関係を判断する問題
  7. Paraphrasing 1問 別の表現で言い換える問題

ご覧の通り、Finding the main idea & detailsが24問。全体の約70%を占めています。この手の問題は、従来のセンター試験でも数多く出題されている、いわゆるよくある「読解問題」です。この種の問題は、本文のスキャニングとステートメントの真偽(True or False)判断により導きだされます。残念ながら、これらは思考力を問う問題としては「弱い」部類に入ります。というもの、スキャニング問題は俗にいう「AIでも解ける問題」と言われているからです。現実に、AIのディープラーニングは、センターの世界史でほぼ満点をはじき出しています。なお、「読解問題」はなくすべきだとか、悪問であると言いたいわけではありません。情報を正しくスキャニングする力や、筆者の主張を正しく読み取る力も、日本語・英語に限らず、重要な読解スキルです。ただ、問題として指摘しておきたいのは、全体とのバランスです。つまり、この手の問題をもう少し減らして、その代わりに、上記2~7のような、より生徒の思考力を問う問題を増やしてもよいのではないかということです。これが、今回プレテストを解いてみて率直に感じた私の感想です。

一方で、設問の場面設定については、工夫がこらされていると思います。例えば、催しの企画、ディベート、ポスタープレゼン、リサーチを行うという明確な行動目標が設定されています。そして、そのために情報リソース(メモ、ウェブページ、レシピ、ブログ、マガジンの記事、海外留学雑誌)が提示されています。このようなコンテクストの設定はよくできていると思います。(実際に日本の高校でもディベートやポスタープレゼンなど、もっと行われるとよいのですが…)

以下は問題ごとの分析です。ご参考まで。

第1問

A: 英語部所属。マレーシア出身の生徒が帰国。さよならパーティー企画。ALTのメモ。

  • 問1:メモ情報を読み取り、書き手の意図を選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問2:メモ情報を読み取り、書き手の意図を選ぶ問題(Finding the main idea & details)

B: 英語のウェブサイト。外国の姉妹提携都市から若者を受け入れるプログラムのチラシ。

  • 問1:リード文を読み取り、目的を選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問2:スケジュールを読み取り、実際に行うことを選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問3:チラシの行事に参加するメリットを推測して選ぶ問題(Making inferences)

第2問 CEFR A1, A2

A: 料理部に所属。ウェブで新しい料理のレシピを入手。ミート&ポテトパイの作り方。

  • 問1:レシピを作に最適な理由を選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問2:レシピの調理時間を計算して最も近いものを選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問3:生ニンジン嫌いがレシピ料理を食べる可能性を推測する問題(Making inferences)
  • 問4:レシピに書かれている事実を特定する(Identifying fact or opinion)
  • 問5:レシピのレビューに書かれている意見を特定する(Identifying fact or opinion)

B: 英語ディベートの準備。担当の先生から参考資料(記事)を受け取る。テーマは、フランス全校で携帯電話使用禁止。賛成意見と反対意見の記事。

  • 問1:記事について書かれていることを特定する問題(Finding the main idea & details)
  • 問2:肯定派の立場として参考になる意見を特定する問題(Identifying fact or opinion)
  • 問3:反対派の立場として参考になる意見を特定する問題(Identifying fact or opinion)
  • 問4:記事内の特定の英文を言い換える問題(paraphrasing)
  • 問5:論者の意見の強さの度合いを選ぶ問題(Finding the main idea & details)

第3問 CEFR A1, A2

A: 外国人留学生のブログ。文化祭に参加した日の出来事。

  • 問1:ブログに書かれていることを特定する問題(Finding the main idea & details)
  • 問2:ブログの情報と写真から読み取れることを特定する問題(Finding the main idea & details)

B: 海外留学雑誌のエッセイ文。花に隠されたメッセージについて。

  • 問1:筆者の感情の変化を形容詞で時系列に並び替える問題(Sequencing)
  • 問2:筆者の取った行動が不適切だった理由を選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問3:エッセイを読み取り、要旨を選ぶ問題(Finding the main idea & details)

第4問 CEFR B1

リサーチ学習。生徒の読書習慣に関する2つの記事。それぞれ筆者の考え。

  • 問1:筆者Aも筆者Bも言及していないことを選ぶ問題。(Comparing & Contrasting)
  • 問2:筆者Bの主張と図表と比較し、出身国を特定する問題(Comparing & Contrasting)
  • 問3:記事を読み取り、趣味としての読書の効用を複数選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問4:筆者Aと筆者Bのそれぞれの主張の要旨を選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問5:2つの記事の共通点を抽出し、レポートのテーマを選ぶ問題(Finding the main idea & details)

第5問 CEFR B1

ポスタープレゼンの準備。雑誌の記事。「アメリカのジャーナリズムに変革を起こした人物」

  • 問1:記事を読み取り、登場人物の半生をイベント順に並び替える問題(Sequencing)
  • 問2:記事を読み取り、ポスターに表記する要旨を複数選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問3:記事を読み取り、雑誌”The Sun”のモットーを選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問4:記事を読み取り、ポスターに表記する要旨を複数選ぶ問題(Finding the main idea & details)

第6問 CEFR B1

A: グループプレゼンの準備。女性パイロットにみるジェンダーキャリアバイアスと改革提案に関する記事。

  • 問1:記事を読み、筆者の主張と一致するステートメントを選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問2:記事を読み、文中の記述に合うステートメントを選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問3:記事を読み、全体の要約として適切なものを選ぶ問題(Finding the main idea & details)

B: 世界の生態系バランス問題について学ぶ。イエローストーン国立公園の生態系の記事。

  • 問1:記事を読み、文中の記述に合うステートメントを選ぶ問題(Finding the main idea & details)
  • 問2:記事の内容を最も良く表している図表を選ぶ問題(Comparing & Contrasting)
  • 問3:記事を読み、文中の記述に合うステートメントを2つ選ぶ問題(Identifying cause and effect)
  • 問4:記事を読み、文章の表題として適切なステートメントを選ぶ問題(Finding the main idea & details)

以上、今回は欧米の現地校の読解スキルを用いて、思考問題を分析してみました。

※問題のジャンル分けはあくまで個人の主観に基づいたものです。思考スキルは相対的に補完しあうものなので、切り口によっては違う見方もあると思います。

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